詩集 プディングの恋
◉著者 小島章生
◉体裁 四六判・並製・131頁
◉定価 本体1,637円+税
ISBN978-4-86691-796-2
◉刊行 2025年2月
●著者紹介
小島章生(おじま あきお)
1983年高知生まれ
「詩集・賢者」2017年
本作が第二詩集となる。
本の内容
言葉というものは不思議な生き物である。山に囲まれた集落では人見知りになったり、海沿いの開けた土地では社交的になったりと気候や風土によってその性質を大きく変える。また人を介して伝わると微妙にニュアンスが変化する。私は旅人なのでどちらかと言うと親切にされたり人懐っこい土地を好む。言葉の苗が良く育っている土壌を好む。もちろん手つかずの未開には未開なりの良さがあるだろう。料理と同じで言葉にも適切な調理法があるのだろう。なるべく新鮮な状態をさっと茹でて口に含んでみたり。シンプルなスパイスで味付けしてみたり。哲学者のように発酵させてみたり。日本人も食通が増えてきたから言葉の在り方もだんだん様変わりしてきた。食通や料理人が飽和状態でなお増殖しているのに対して善良な生産者は日々減っているからである。上質な食材を巡って欲深い熾烈な争いが繰り広げられているのは紛れもない事実だ。なので人を介して伝わると微妙にニュアンスが変化するという原則に立ち返ってみようと思う。真の食通なら食材を有り難くいただく事と同じようにそれに準じるほど美しい言葉を吐くように肝に銘じなければならない。美しい言葉に日々研鑽を積まなければならない。
私の場合はどうかというと、もうお気づきであると思うが。ギャルソンに運ばれて皆様の前に並べられる頃にはそれはうっとりとして溶けて消えてしまいそうなくらい滑らかな食感に変化しているはずだ。
——表題作「プディングの恋」より