龍谷叢書38

植民地台湾と日本仏教

【著】
中西 直樹(龍谷大学教授)

体裁/A5判、上製、358頁
定価/4,800円(+税)
ISBN/978-4-908147-69-2
刊行年月/2016年6月

本の内容

本書は、半世紀に及ぶ戦前日本仏教の台湾布教の全体像を解明することを目的としている。近年、日本仏教のアジア布教は、多様な専門領域の研究者の研究対象となり、様々な観点から論考が発表されつつある。なかでも台湾は、朝鮮・中国に比べると研究は少ないものの、日本統治下台湾の宗教政策を「日本の国家神道と台湾の国家神道と台湾の在来宗教との力関係を軸」に明らかにした蔡錦堂の優れた研究があり、その後も、個別研究が蓄積されている。しかし、これらは単一の宗派の動向を扱ったものがほとんどであり、台湾布教の全体像の解明に関する研究に大きな進展が見られたとは言い難い状況にある。その主なる原因の一つには資料的な制約があると考えられる。日本仏教の台湾布教史全体を俯瞰できるような基本的な文献はなく、関係資料のなかにはその存在が一般にあまり知られていないものがあり、個々の研究機関などに分散所蔵されていて閲覧が困難なものも少なくない。
 筆者は、こうした研究状況を少しでも打開したいと考え、さきに『仏教植民地布教史資料集成<台湾編>』を編集・刊行した。ところが、台湾布教では、その事業を各宗派単位でまとめた記録さえも少なく、布教実態の全体像を把握するにはあまりにも不十分な点が目立つ結果となった。このことは、かつて刊行した『仏教植民地布教史資料集成<朝鮮編>』っも同様であり、そこで『植民地朝鮮と日本仏教』に引き続いて本書を執筆することを企図したのである。