龍谷叢書31

植民地朝鮮と日本仏教

【著】
中西 直樹(龍谷大学教授)

体裁/A5判、上製、312頁
定価/4,800円(+税)
ISBN/978-4-906943-40-1
刊行年月/2013年10月

本の内容

本書は、日本仏教による朝鮮布教の全体像の解明を試みたものである。日本仏教による朝鮮布教史の全体像を把握するため、次の五期に分けて叙述することとした。

 第一期は、一八七七年に真宗大谷派が奥村圓心らを派遣して朝鮮布教に着手してから、一八八四年の甲申政変に至るまでの時期、続く第二期は、甲申政変から日清戦争に至るまでの時期、第三期は、日清戦争から一九一九年の三・一運動前までの約一五年間である。第四期は、三・一運動から一九三一年の満州事変まで、第五期は、一九三一年九月の満州事変以降、日本敗戦に至るまでの時期である。

 アジア布教は日本の敗戦後に途絶して、戦後も再開の気運が生じてこなかった。その原因には、敗戦による布教拠点の喪失や在留邦人の引き揚げ、アジア諸国との関係や現地の排日感情などもあろうが、それだけで説明がつく問題とも言えない。何よりも、日本仏教各宗派が、仏教思想の普遍性を根本から問いなおし、アジア諸国との対話・交流を重ねる努力を怠ってきた点に求められるべきであろう。今後、こうした日本仏教のあり方を見直して行くためにも、一層の日本仏教のアジア布教事業の実態解明と検証とが必要となるであろうが、本書がいささかでも、これに寄与することを願ってやまない。