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本願寺と鉄道の近代史

全1巻

◉著者 中西直樹
◉体裁 A5判・上製・314頁
◉定価 5,280円(本体4,800円+税10%)
     ISBN978-4-86691-591-3
◉刊行 2023年9月

●著者紹介
中西直樹(なかにし なおき)
1961年、三重県に生まれる。88年、龍谷大学大学院修士課程修了。京都女子大学事務職員・筑紫女学園大学人間福祉学科准教授を経て、2011年龍谷大学准教授。現在、龍谷大学文学部教授。

●主著書
『新仏教とは何であったか―近代仏教改革のゆくえ―』(法藏館 2018年)
『戦後学生雑誌と学生運動』(不二出版 2020年)
『日本仏教アジア布教の諸相』(三人社 2020年)
『近代本願寺論の展開』(三人社 2020年)

本の内容

日本近代の鉄道発達に本願寺が果たした役割の大きさ、鉄道布教に集約的にあらわれた近代真宗の社会的実践・教化事業に関して、その実態を明らかにする。


●刊行の言葉
「近代日本の鉄道事業と仏教との関係はきわめて深い。戦前期の鉄道敷設工事や鉄道運行に際しては、多数の死者を出す大事故が頻発した。これら死者の追悼供養を行うことは、鉄道事業を継続していく上で不可欠であり、鉄道経営側は追悼法要の執行を仏教側に期待した。また観光旅行がそれほど一般化していない状況で、寺院参詣の乗客は鉄道会社の大きな収入源であった。一方、鉄道の普及は、本願寺参詣のあり方を大きく変えた。鉄道整備がすすんだ1895年(明治28年)以降、大規模な法要が次々と執行され、多くの参詣者が集まり、門前は異様な熱気に包まれた。さらに日露戦争後、鉄道国有法が公布され、内閣直轄の鉄道院(後に鉄道省)が設置されると、鉄道院との間で綿密な輸送計画が立てられ、団体参詣もはじまった。本願寺の法要は、京都に多数の参詣者・観光客をもたらし、東京遷都により衰微した京都を観光地として経済的に活性化させる上でも、大きな役割を果たした」


●目  次
第一章 近代鉄道敷設事業と本願寺
 はじめに 
 一、本願寺の鉄道敷設計画  
 二、鉄道敷設の中断と再開  
 三、起業公債と東西本願寺 
 四、両堂再建着手と輸送ルート 
 五、両堂再建と鉄道網整備
 六、大谷派の両堂再建法要 
 七、本願寺派の日清戦争戦没者追悼法要 
 おわりに
第二章   日清戦争後の本願寺派に見る起業熱と財界連携
 はじめに 
 一、仏教起業設立気運の興起 
 二、日清戦争後の仏教起業熱
 三、保険会社設立計画と本願寺派 
 四、二つの真宗系保険株式会社
 五、真宗信徒生命保険株式会社への改名 
 六、真宗信徒生命への支援表明
 七、蓮如四百回忌法要の修行 
 八、財界との関係深化 
 おわりに
 (付)真宗信徒生命保険株式会社 
   発起人主要人物略伝
第三章 本願寺派鉄道布教と団体参詣の創始
 はじめに 
 一、大阪市特殊布教の興起 
 二、戊申詔書と臨時布教の拡大
 三、臨時布教のはじまり 
 四、鉄道布教の開始 
 五、団体参詣の始動
 六、鉄道巡回講演 
 おわりに
第四章 郵便布教と警察布教の展開
 はじめに 
 一、郵便布教のはじまり 
 二、仏教青年伝道会の活動
 三、本願寺派の郵便布教 
 四、郵便布教の実態 
 五、警察布教着手とその背景
 六、本願寺派警察布教の展開 
 おわりに
第五章 鉄道道友会の創設と展開
 はじめに 
 一、鉄道道友会創設の経緯 
 二、鉄道道友会趣意書及び規則
 三、各宗提携をめぐる葛藤 
 四、鉄道道友会分裂とその背景
 五、鉄道共敬会の発足とその活動 
 六、事故対応と追弔
 七、事業員の福利厚生事業 
 おわりに
附 章 鉄道道友会関係資料
 資料解説 
 復刻資料一、『内国布教一覧』(浄土真宗本願寺派内国布教総監部、一九一二年)
 復刻資料二、『鉄道と教化』(鉄道道友会本部、一九三八年)