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龍谷叢書59

近代本願寺絵図と 観光地京都
親鸞生誕八百五十年・立教開宗八百年記念出版

全1巻

【著者】
中西直樹(龍谷大学教授)

体裁/B5判オールカラー148頁、コデックス装
定価/4,180円(本体3,800円+税)
ISBN/978-4-86691-418-3
刊行/2022年9月

本の内容

〔本書の特色〕
▼絵図39点を見開きの大型カラー図版で掲載。
▼180度開くコデックス装。
 ノド(本の綴じ部分)も隠れることなくご覧いただけます。
▼論考「明治期の真宗施本事業の変遷」では施本・絵はがきなど約55点をカラーで紹介。
▼絵図解説では関連資料の挿図も充実。挿図点数60点。

〔刊行の言葉〕
明治期以降、急速な鉄道の発展により、多人数の高速輸送が可能となった。しかし、観光旅行がそれほど一般化していない状況にあって、寺院参詣の乗客は私設鉄道会社にとっての大きな収入源であった。とくに関西圏の鉄道各社の経営陣には、東西本願寺の有力門徒が就任し、創業時から両本願寺の参詣者に団体割引を行い、各種法会や彼岸の際に臨時列車を増発し、後に官設鉄道もこれにならった。
鉄道整備がすすんだ日清戦争後には、大規模な法会が次々と執行され、多くの参詣者が京都に集まり、両本願寺門前は異様な熱気に包まれた。さらに日露戦争後、鉄道国有法が公布、鉄道院が設立されると、団体参詣もはじまった。こうして両本願寺の法会は、京都に多数の参詣者をもたらし、東京遷都により衰微した京都を観光地として経済的に活性化させる上で、大きな役割をになった。
法会に際して、その予告や記念品のために作成されたのが、法会絵図であった。法会絵図は、明治末以降、次第に写真帖・絵はがきなどへと移行していったが、明治・大正期には数多くの法会絵図が作成された。そこからも、本願寺法会に結集された信徒たちの膨大なパワーと熱気、近代の日本社会に与えた影響力の大きさを感得することは可能であろう。
本書は、2023年に親鸞誕生八百五十年・立教開宗八百年を迎えるのを記念して、明治・大正期の本願寺法会絵図とともに、真宗施本事業の変遷を図版入りで紹介して解説を付したものである。


〔目次〕

はしがき  中西直樹

第一部 解説論文
一、真宗本願寺派大連・関東別院の活動と終焉 野世英水
二、真宗本願寺派漢口本願寺の活動と大谷光瑞 野世英水
三、本願寺派の初期ウラジオストク布教 —日清戦争直後までの状況を中心に— 中西直樹
四、報効義会と真宗の千島布教 中西直樹
五、高田栖岸と本願寺派香港布教 中西直樹
六、戦前期日本仏教のシンガポール布教 中西直樹
七、戦前期日本仏教のマライ半島布教 中西直樹

第二部 『仏教植民地布教史資料集成』各編解題
一、『仏教植民地布教史資料集成〈朝鮮編〉』解題 中西直樹
   第一巻 日本仏教の布教概要(解題)
   第二巻・第三巻 統監府・総督府年次刊行物(解題)
   第四巻 三・一独立運動後の総督府と仏教(解題)
   第五巻 真宗大谷派の動向(解題)
   第六巻 日蓮宗の動向(解題)
   第七巻 諸宗派の布教動向(解題)

二、『仏教植民地布教史資料集成〈台湾編〉』解題 中西直樹
   第一巻 台湾総督府刊行資料(解題)
   第二巻 台湾布教の概要(解題)
   第三巻 曹洞宗・臨済宗の布教(解題)
   第四・五巻 浄土真宗本願寺派の布教(解題)
   第六巻 諸宗派の布教(解題)

三、『仏教植民地布教史資料集成〈満州・諸地域編〉』解題 中西直樹
   第一巻・二巻 大谷派関係資料(解題)
   第三巻〜五巻 本願寺派関係資料(解題)
   第六巻 真言宗・曹洞宗関係資料(解題)
   第七巻 浄土宗・日蓮宗関係資料(解題)
   第八巻 諸宗派の動向(解題)

あとがき  中西直樹