蕃界
【復刻版】
【解題】
中西直樹(龍谷大学文学部教授)
体裁/A5判、上製、布装 総約755頁
巻末・附録/解説①「雑誌『蕃界』について」、『蕃界』 総目次・執筆者索引、台湾原住民族教化の関係記事集、解説②「日本仏教の台湾原住民族教化」
原誌提供/中西直樹
定価/55,000円(本体50,000円+税10%)
ISBN978-4-86691-800-6
刊行年月/2025年10月
本の内容
1913年、日本の台湾総督府は「蕃地」の実効支配を進めるべく、森丑之助や佐倉孫三ら文化人類学者が参画する研究誌『蕃界』を刊行した。
台湾原住民族の実態とその調査活動を伝える貴重な資料である本書を、仏教僧侶の教化活動にまつわる関係記事を加え、復刻する。
「雑誌『蕃界』と日本仏教の台湾原住民族教化」中西直樹〈龍谷大学文学部教授〉
日清戦後、日本は台湾を領有することとなったが、「生蕃」と呼ばれた原住民族の居住する山間部を統治下に置くことには苦慮した。領有後十数年を経過しても、総督府の行政区域は全島総面積の半分にも達せず、残りの半分以上には非行政区域(いわゆる「蕃地」)がひろがっていた。
これへの本格的対策は、一九〇六(明治三十九)年に就任した佐久間左馬太総督のもとで推進され、〇九年に「五箇年間計画理蕃事業」が立案されて翌年から「蕃地」の実効支配に向けた取り組みが実施された。この計画実施にあたっては、武力制圧に重点を置く威圧だけでなく、原住民族の調査事業と日本仏教僧侶による教化活動も並行して行われた。
調査事業に関わる資料のなかに、総督府関係者を中心に組織された「生蕃研究会」の機関誌『蕃界』がある。わずか三号で廃刊となったものの、森丑之助や佐倉孫三ら文化人類学者が参画し、当時の台
湾原住民の実態とその調査活動を知る上で貴重な文献資料と言える。しかし、散佚が著しく、全号を閲覧することは困難であり「幻の雑誌」とも言われている。
一方、仏教僧侶による台湾原住民族への教化活動については、当時発行されていた仏教関係の新聞・雑誌に関係記事をいくつか散見するが、そのことはあまり知られていない。
本書では、「五箇年間計画理蕃事業」期の調査事業を知る上で重要資料となる雑誌『蕃界』を復刻するとともに、仏教僧侶の活動実態を伝える関係記事の翻刻を加えて刊行することとした。