性之研究
復刻版
【解題・原本提供】
斎藤 光(京都精華大学教授)
【推薦】
井上章一(国際日本文化研究センター)
菊地 曉(京都大学人文科学研究所)
体裁/A5判、上製、本文総約1,410頁
別冊/解題・総目次・執筆者索引
揃定価/100,000円(+税)
刊行年月/2024年11月~2025年7月
本の内容
LGBTQの声が顕在化する今日まで、近代日本のセクシュアリティ研究はいかなる隘路をめぐったのか。
第一次世界大戦後に勃興した新興学術と連動して創刊された本誌には、古今東西の性の歴史、性教育、同性愛、遊女の実態のほか、宗教・神話・奇習・迷信など民俗学と「性」の諸問題が収められている。
本誌の復刻をもって、日本での「性」にまつわる知の在り方を俯瞰する。
刊行のことば 斎藤 光(京都精華大学教授)
日本語文化圏では、19世紀末から20世紀初めにかけて、セックスを記述・表現し分析し表象する記号体系に大きな転換が起きた。江戸期以前から明治までは、「色」「淫」という漢字でつかまれていた〈もの〉が、明治の終わり以降は、「性」という漢字でつかまれ、現されるようになったのである。言い換えるとセックスをとらえる日本語上の認知システムが、和漢的「色」「淫」枠組みから欧米的「性」枠組み(「性=SEX」システム)へと大幅にパラダイムチェンジしたのだ。しかも、このチェンジは、日本語文化圏にとどまらず、東アジアに広がる漢字文化圏全体でのセックス認知システムの変容へとつながってゆく。
この劇的な変容は、偶然にも、欧米における性科学の勃興と同時代的であり、相即的であった。1886年の『性的精神病質』初版の出版を端緒とした欧米での「性」にかかわる最新学術知識の増殖は、「性=SEX」システムを通して、日本語文化圏に移植されていったのである。
第一次世界大戦終結後、日本語文化圏では、民俗学という新興学術の勃興とも連動しながら、「性」を対象とする学術的な、あるいは、学術性を標榜する雑誌(性雑誌)の発刊が相次ぎ、一種のブームとなった。1919年創刊の『性之研究』をその嚆矢とし、1956年の『性問題の研究』までこうした雑誌の系列をたどることができる。
ただ、この学術性標榜の性雑誌が、どのような意味を持ったのか、そのことに関しては、まだ明らかになっていない。欧米での「性」の学術との異同や格差、「性」の学術への参入の浅深や質的違いも明確化されてはいない。
今回、こうした性雑誌を復刻することは、日本語文化圏における性雑誌の意義と、日本語文化圏での「性」をめぐる知の在り方を考える基本資料がそろうということを意味している。この資料を基軸として、「性=SEX」システムの働きと形に関しての、また「性」に関するさまざまな観念や表象や実践や制度についてのより正確で精密な研究の広がることが期待される。
配本概要
刊行年月 | 巻数(収録号) | ISBN | 価格 | |
第1回配本 | 2024年11月 | 第1巻〜第2巻 (『性之研究』第1巻 創刊号~第5号、特別号、第6号 / 『性之研究』第2巻 第1号~第5・6号収録) | 978-4-86691-776-4 | 50,000円(+税) |
第2回配本 | 2025年7月 | 第3巻〜第4巻 (『性之研究』第3巻 第1号、第2号、第4号、第6号、 第7号 / 『賣淫研究』第一冊〜第三冊 / (第2期)『性之研究』 第一冊〜第三冊収録)+別冊1(解題・総目次・執筆者索引) ※『賣淫研究』の第一冊〜第三冊は『性之研究』第3巻の第3号、第5号、第8号にあたります。 | ISBN978-4-86691-777-1 | 50,000円(+税) |